こんにちは、相宮です。
本日はひたすら宝石の国について感傷に浸る記事です。
まずは『宝石の国』完結おめでとうございます。
約12年の長きににわたる連載、本当にお疲れさまでした。
本当はこの記事を完結してすぐに上げるべきだったのですが、作品のまぶしさに対して私の文章力があまりにも追いつかず、感想を上げていいのだろうか?などと悩んでずっと記事を上げられずにいました。
でも最終的に、ここは相宮の個人ブログなので思ったこと書けばいいか……の気持ちで上げます。
※以下最終話までのネタバレがあります。ご注意ください。
完結に寄せて
すごい作品でしたね。
明るくてにぎやかで、可愛らしい雰囲気で始まったこの作品。
序盤からは、誰がこんな展開になると予想したでしょうか。
苦しみ抜いてひとつの世界が終わり、主人公であるフォスフォフィライトも1話とは全く姿形を変えてしまっています。
でも、不思議と穏やかな気持ちで終わりを見届けられました。
フォスフォフィライトの変遷
フォスは作中で何度も自身の身体を失い、その度に姿を変え、やがて傍目から見てフォスフォフィライトと呼んでいいのか分からないくらいの変貌を遂げます。
その原因はフォスの承認欲求にあったといえるでしょう。
誰からもうっすらと必要とされていなかったフォスは、他人から必要とされることをずっと望んでいました。
そのために無謀な挑戦も行い、失敗もする。でも元々周りに必要とされていないから助けてももらえない。書いていて胸が痛くなってきました。
次項の仏教との関連性で後述しますが、フォスフォフィライトは人間として完成されたキャラクターですので、人間と同じ煩悩を抱えてしまうことになったのだろうと考えています。
最終的に肉体の余計な部分を全て手放したフォスは純粋に他人の幸せを願います。
やっと他人への執着から解放されて自由になれた証です。
誰にも縛られず、宇宙空間を飛んでいくフォス。
美しいラストです。
仏教との関連性
宝石の国は金剛先生や月人のデザインなどからも分かる通り、仏教をモチーフにしています。
一度人間が滅んだ世界で、彼らは骨(宝石)・肉(アドミラビリス)・魂(月人)の三つに分かたれ存続してきたわけですが、フォスフォフィライトはその全てを獲得し人間となります。
この辺りは88話でエクメアが説明しています。
そして人間になったフォスが知ったものは様々な絶望や復讐の感情でした……。人間の業の深さよ。
特に、月に行った宝石たちも月人化して人間のような暮らしをしていましたし、地球側の宝石たちの雲行きも怪しくなりつつあり、ここはしんどい時期でしたね。
さらに特異なのは、フォスが全てを無に還す存在となったことです。
ここで登場するのが仏教における七宝というものです。
七宝とは仏教において貴重とされる七つの宝を指します。宗派において内容が違いますが、法華経においては「金、銀、瑪瑙、瑠璃、硨磲、真珠、玫瑰」とされています。
それぞれを対応させると以下のようになります。
七宝 | 対応 | パーツ |
金 | 合金 | 腕 |
銀 | 水銀 | 浴びた(70話) |
瑪瑙 | アゲート | 脚 |
瑠璃 | ラピスラズリ | 頭 |
硨磲 | 貝殻 | 脚 |
真珠 | 真珠 | 左目 |
玫瑰 | パパラチア | 表層加工(84話) |
おそらくこれによってフォスは「この世で最も貴重で崇められるもの」になってしまったんじゃないかなあと思います。
けれどその頃にはフォスと宝石たちとの関係は決裂し、フォスにとっては彼らはもう不要、とな……。
この辺の展開思い出すだけで胃が痛いですね(2回目)。
ただ、フォスは望み通り彼らを無に送り、仏としての役割を果たすわけです。
フォスは最後に「やっと解り合えましたね」と言っていますが、お互いの「無に至りたい」という願いは解り合えるものだったんでしょうか。今となっては誰にも分かりませんね。
宝石の国・第二部
ここからは単行本未収録分の話になります。(13巻収録予定分)
全てを無に帰した後、静かになった地球でフォスは石ころと出会いました。聞けばその石ころは自分に満足しているといいます。
無尽蔵に求めるから満たされない。フォスはようやく気付くのです。
ここからの展開は実に静かで、穏やかです。99~108話の短い間ですが、宝石の国・第二部とでも呼ぶべきでしょうか。
今までのドロドロが嘘のように、心が浄化されていきます。
最終話でフォスが割れても、それを誰も咎めることなく受け入れているのがじんわりきてしまいました。
フォスは居場所を見つけたんだなあと。
そして宇宙へ飛び立っていくフォスの破片。
誰かを求める願いから、誰かに与える願いへ。
成長しましたね。
まとめ
宝石の国は本当に読みごたえのある作品です。
出会えてよかった。
本当にありがとうございました。
単行本13巻は2024年秋ごろ発売予定だそうです。
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